今回ある販売店のスタッフの方にご協力を頂き、ターンテーブル及びフォノイコの電源部にコネクターホルダーNCF Booster-Braceを使用し、6種類のMM・MC両カートリッジによる使用前後の変化の違いをレポートいたします。
番外編として、STANTON 881S/N-890Eも登場します。
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
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②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
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※各カートリッジは、約30分の慣らし運転後に音質の変化試聴を行う。
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A)SHURE V-15 TypeⅢ
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
S/N比・高域方向の分解能が向上し、音の見通しが良くなる。(高域方向の変化は大きく、付帯音が取れる事によってより鮮明になるが、硬質感は取れ、より繊細な表現となる)
ヴォーカル帯域の輪郭が鮮明になる。
より口元が小さくなり、引き締まる事により、聞き取り易くなる。
中低域が引き締まり、密度感が向上し、立体的に聞える様になる。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
中高域の輪郭がボヤける為、解像度が下がった様に感じる。
(高域に付帯音が乗り、金属っぽい音質となるが、恐らくNCF Booster Braceを取り外した事により、電源プラグそのものの鳴きが発生する事が原因と思われる)
ヴォーカルの輪郭が不鮮明になり、漠然とした歌い方に聴こえる。
(NCF Booster Braceを取り付けた時よりも取り外した時の音質劣化の方がより分かるかもしれない。イメージ的にはモヤがかかってしまい、かなりモタつく様に聴こえる。)
量感そのものに関しては①と変わらないが、解像度は低下し、押し出しは弱くなる。
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B)Audio Technica AT-150E/G
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
中低域方向の制動力が向上し、密度感が上がる。
低域方向の変貌は、上記SHURE V-15 TypeⅢよりも大きく良好な方向へ推移。
元々鋭く感じられた高域が、まろやかになる。
且つ、高域に充分な音の密度感が出てくる様になり立体感も向上。
ヴォーカル帯域は、口元は大きく変わらないが、浮かび上がる様な立体感が感じ取れる様になる。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
エネルギーバランスが中高域方向に寄ってしまい、且つ高域が鋭く感じる様になる。
よって、低域方向の腰の強さも減少し、腰高な音になってしまう。
全帯域で密度感が大きく減少し、且つ中抜け(ドンシャリ)傾向となってしまう為、長時間聴くには少々辛い。
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C)Audio Technica AT-15E
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
低域の押し出し感がより強く出る様になり、密度感も大きく変貌。
低域の勢いは逞しく、音の骨格がしっかりとする為、非常に安心して聴ける様になる。
ヴォーカル帯域の太さ・力強さが大きく向上し、より緻密な表現へと変貌。
高域は大きな変貌は無いものの、全帯域に渡って密度感が向上し、より自然な音の出方となる。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
ヴォーカル帯域の密度感が減少し、口元が大きくなってしまう為、漠然と歌っている様に聴こえる。
NCF Booster Braceを外すとよく分かる様になるが、AT-150E/G同様高域がやかましく聴こえる。
中低域方向の音質が濁る。
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D)DENON DL-103
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
低域方向はよく弾み、リズミカルな感覚へ変貌。
ヴォーカル帯域は、より柔らかく、肉声に近くなる。
曲によっては低域方向の力感/密度感の良好な方向への変化は非常に大きく、今回低域方向の変化が大きく感じられたAT-15Eよりも更に大きく変化。
全帯域で解像度は良好な方向へ推移するが、当試聴の中で、高域方向の変化は一番感じられなかった。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
全帯域で解像度が低下。
当試聴の中で、最も解像度の劣化が感じられた。
特に中域の解像度/分解能の劣化が著しく感じられ、ヴォーカルの肉声さの表現はかなり薄れてしまう。
低域方向の分解能の劣化により、低域が弾んで来ない。
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E)Audio Technica AT-33E
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
ヴォーカル帯域の輪郭が鮮明になり、浮かび上がる様な立体感が感じ取れる。
中域の楽器群の響きが整理され、情報量も上がった様に聴こえる。
低域の制動力が向上し、分解能も上がる。
当カートリッジの特徴でもある高域方向がより洗練され、緻密な表現へと変貌する。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
中低域の反応が鈍くなる。
高域が不鮮明となり、且つ鋭さが目立つ。
ヴォーカルが浮かび上がってこない(漠然とした歌い方に聴こえる)。
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F)< 番外編 > STANTON 881S/N-890E
単体の音質傾向としては、AT-33Eに最も音質が近いのだが、解像度/分解能に関しては別次元であり、低域方向の量感は多くないが、超低域方向にスムーズに伸びる傾向の為に極めて自然な鳴り方である。
(低域方向の太さが支配するDL-103とは正反対の音質傾向)
ヴォーカル帯域は最も口元が小さく、且つ輪郭が明瞭であり、NCF Booster Braceを装着せずとも浮かび上がる様な聴こえ方。
①NCF Booster Braceを取り外した状態→取り付けた場合の音質の変化
元々優秀だったヴォーカル帯域が更に洗練され、より緻密に深みのある歌い方になる。
高域方向の分解能が更に向上、CDを聴いているかの様に自然であり、鋭さを感じなくなる。
低域方向の量感は変わらないが、より制動が効いた出方となる。
②NCF Booster Braceを取り付けた状態→取り外した場合の音質の変化
全帯域での解像度/分解能の低下。
単体で聴いた時は感じる事が無かったが、楕円針特有の高域の鋭さが耳に付く。
ヴォーカル帯域に濁りが生じる。
低域は一見変わらない様に感じるが、解像度が低下しており若干籠った様に聴こえる。
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>>総評
NCF Booster Braceを使用する事によって、変化の度合いは異なるものの、全てのカートリッジで音質は良好な方向に変化した。
Brace無し→取り付けた状態よりも、むしろBrace有り→取り外した状態の音質の劣化に愕然とする結果となった(元々はこんなに酷い音だったのかと…)。
全カートリッジ共通で、NCF Booster-Braceを取り外した事による解像度の低下・ヴォーカル帯域の劣化は大きく感じ、恐らくCDプレーヤー等、デジタル機器にNCF Booster-Braceを導入しても同様の結果になると予想する事が出来る。
最も良好な方向に変化したのはAudio Technica AT-110Eであり、元々ハイバランス傾向にあった高域の鋭さは改善され、フラットバランスに聴こえる様になった事は非常に大きい。
逆に最も効果を感じにくかったのはAudio Technica AT-15Eであり、正直パッと聴くと変化はあまり感じられなかった。だが、ヴォーカル帯域が出た瞬間、変化を感じ取る事が出来た訳だが…。
今回の試聴の中でDL-103だけが丸針であり、他は楕円針だったが、丸針と楕円針で音質変化する帯域が異なった事が非常に興味深かった。
楕円針はどちらかというと(AT-15Eを除く)高域の鋭さという欠点を解消し、より高解像度に・緻密に変化する傾向が強かったが、丸針に関しては長所の低域方向を更に良くした方向に推移した。
試聴後、今回の試聴外の丸針カートリッジでも聴いてみたが、やはり高域方向の解像度の変化よりも、低域方向の密度感の変化の方が大きかった。